ヴァルディゼールは“黄金のバンタム級”のチャンピオン候補!?/丹下日出夫
『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 19年一発目に取り上げるのは、シンザン記念を快勝したヴァルディゼール。そのキレ味から、激戦区となる“黄金のバンタム級”でも王者候補筆頭に!? 今年のクラシック世代もロードカナロア産駒から目が離せない!(※評価はS〜Eの6段階)
■ヴァルディゼール(牡3・ロードカナロア×ファーゴ)
6日(日):京都11R・シンザン記念(GIII)/芝1600m/1分35秒7
11月の京都・芝1600mで新馬勝ち。やや重条件下で、上り12秒3-11秒6-11秒2というレースラップを、正味1F直線だけ、推定11秒0の高速ラップで突き抜けた。
さて、二戦目のシンザン記念。発表は良馬場だが、1回京都の芝は曇天の空模様同様、マイル換算で1秒近く時計がかかるパワー馬場。テンの2F目に10秒8のHラップが飛び出し、1000m通過は初日の京都金杯より0秒1遅いだけの59秒8。上り3Fのレースラップは12秒1-12秒1-11秒7(35秒9)と、忍耐と切れの両方を問われる難しい流れとなったが、2着馬が勢いよく外から迫っても、自らハミを取り直し、キッと鼻づらを伸ばした。なるほど、ラスト1Fは11秒7、最後のラップに闘志や勝負強さが刻印されている。
1分35秒7という走破タイムは、前日の京都金杯と0秒8差。上りラップに11秒台もあり、見た目ほど悪くない。
まだ若さは残っているが、レースに行けば集中してファイト。母ファーゴ(父ハーツクライ)は、新潟・芝マイルで3勝。体型はコンパクトなマイラー。ボクシングでいえば、参加人口がもっとも多く、ピラミッドは一番に高い「黄金のバンタム級」―― そのチャンピオン・ベルトのひとつは巻けるかも。クラシックディスタンスには、少し限界が出てくるかもしれないが、アーリントンCやNZTなど、NHKマイルを逆算して、いかにローテを組むかでしょうね。
2着のマイネルフラップは、12月24日付の当コラムで、「重はオニ」ふうに書いた馬ですが、しぶい馬場なら、いつでもこのくらい走る(キョウヘイみたいな馬ですね)。
ミッキーブリランテは、一瞬外から差し切りを思わせたが、3〜4角で頭を上げたり、直線大外に入ったロスがもったいなかった。【評価B/適性・芝1600m】
■ヒシゲッコウ(牡3・ルーラーシップ×ラルケット)
5日(土):中山5R・3歳新馬/芝2000m/2分2秒4
半兄はステルヴィオ(父ロードカナロア)、昨秋のマイルCSイン強襲は記憶に新しい。
父がルーラーシップに代わり、フレームが一回り大きくなった。パドックではチャカつき気味。この血統は、少しうるさいな。ただ、生産はノーザン。何頭かの兄姉を育てあげ、仕上げのサジ加減は手の内に入っており、ノーザンの育成力は、代を重ねるごとに、静かに着実に実を結ぶ。
なんて、1000m通過は1分2秒5のスロー。少しリキみ加減ではあったが、6Fめから12秒0-12秒0にピッチが上がり、上り3F・11秒9-11秒9-12秒1(35秒9)というタフなレースラップを、35秒1で一蹴。最後の1Fは、自然な形で11秒2前後のHラップをマークした。
心身ともに、まだ幼い。ローテーションや番組チョイスに気を配る必要があるが、兄とは違う中距離で、古馬になればオープン昇級が見える。【評価B/適性・芝1800m】
■エングレーバー(牡3・オルフェーヴル×マルティンスターク)
5日(土):中山6R・3歳500万下/芝2000m/2分2秒4
マルティンスタークの産駒たちは、脚も首も背中も長く、薄くて硬い仔が多かった。現3歳父はオルフェーヴル。少しうるさいのはご愛敬として、背丈は短め、身体もコロンと丸い。中内田厩舎だから、そう見えるのか――独特の張りと艶があるね。
1000m通過は、前段の新馬戦・5Rと、コンマ1秒遅れの1分2秒6。6〜7Fは12秒4-12秒2で展開、一転上り3Fは11秒9-11秒4-11秒9(35秒2)。馬群を割って抜け出した本馬の上りは34秒8だった。
全体時計・2分2秒4は、5Rの新馬と同じ。5Rのほうが流れが厳しいのは確かだが、上りラップの密度や精度の高さ、レースの質は6Rが上かなと思う。
2着のエスポワールは、道中馬をなだめることができず。うーん、もったいない。人気のラストヌードルは、直線入り口で体当たりだぁ〜!
なんて、「走る」オルフェーヴル産駒は、どんなシルエットが正しいのか。まだ正解と統一規格がない。ただ、現4歳のエポカドーロ、そして本馬は、とりあえずのお手本となるのだろう。
時はまだ1月、平場戦ではあるが、中山2000mの1勝は、遠く皐月賞の予行演習にもなる。目からウロコ、クラシック第一弾が終わったころ、そうか瓢箪から駒というレースだったのかと、思うかもしれない。【評価A/適性・芝1600m】
■シュリ(牡3・ハーツクライ×エーゲリア)
5日(土):京都5R・3歳新馬/芝1800m/1分52秒6
暮れの12月26日、川田が跨り、栗東坂路で53秒4-38秒3-11秒9を計測。これは動く、年明けの新馬勝ちは堅いだろうと、前評判の高かった馬。
長兄ジャンナ(父タニノギムレット)は5勝、2012年度産駒のグレイトチャーター(父サクラバクシンオー)も5勝。ハーツクライ産駒の本馬は、しなやかな490kgの黒鹿毛。1000m通過・1分3秒2の超スロー、ラスト3Fは12秒6-11秒6-11秒4、正味2Fの瞬発力決着を上手にしのいだ。
ただ、兄たちは短距離馬。距離は延びたほうがいいのか、それともマイラーか。身体もガラス細工のように繊細。時計短縮も含め、うーん。次走が悩ましい。【評価C/適性・芝1800m】
■ロジャーバローズ(牡3・ディープインパクト×リトルブック)
5日(土):京都8R・福寿草特別/芝2000m/2分2秒4
前走の紫菊賞は、タフなミドルペースの上に立ち、走破タイムは2分1秒0。2歳10月に、この記録はかなり上質。先着を許したアドマイヤジャスタは、つい先日のホープフルSを、正攻法の競馬で2着に頑張った。
福寿草特別は、その時計の精度を証明する形の勝ち星。前半5Fは1分1秒8の緩ペースを好位で構え、残り4F標識から12秒0-11秒7-12秒1-12秒1(3Fは35秒9)と、一気にレースが動き始めた瞬間を逃すことなく、2着に2馬身差で余裕のフィニッシュ。
ちなみに、母の半姉はドナブリーニ(その娘はジェンティルドンナ)。昨夏のセレクトで見ましたが、明け1歳の全妹も、シルエットのきれいな、なかなかの馬です。
なんて、今日は、この京都の福寿草特別も含め、中山も芝2000mの競馬が3つ組まれていたが、勝ち時計はみんな2分2秒4(笑)。
ただ、京都初日のメイン・京都金杯のタイムは1分34秒9。例年より、中山より1秒時計がかかるタフな馬場だった。【評価B/適性・芝2000m】
■グロオルロージュ(牡3・ジャスタウェイ×アウトオブタイム)
6日(日):中山5R・3歳未勝利/芝2000m/2分2秒3
ジャスタウェイ産駒は、素早さと切れならアウィルアウェイ。パワーならアドマイヤジャスタ、大別するなら、今のところは二つだろうか。
ジャスタ産駒はセレクトの当歳セリなどから、ファーストクロップを何頭も眺めてきたが、サイズも体型も、スタンダードはこの馬だろうなと、キャロットクラブのツアーに行ったときに感じた馬だった。
デビュー戦はスロー、インに押し込まれ3着に敗れたが、今日は1000m通過・1分0秒8のミドルを、踏み遅れないよう、勝負どころで急かせ気味に気合をつけ、12秒2-11秒9-12秒2(3Fは36秒3)というタフな流れを35秒7で、もうひと伸び。土曜の二鞍より0秒1速い、2分2秒3で決着。
何かしら地味に映る馬ですが、そのぶん馬券になりそうな馬ですね。【評価B/適性・芝2000m】
■(外)ヴァッシュモン(牡3・Dubawi×Daksha)
6日(日):中山10R・ジュニアC/芝1600m/1分33秒8
新馬は中山・芝1200mからスタート、中団から追い上げたが初陣は2着。脚色のよさを考慮し、二戦目は1F延長、東京の1400mを1分22秒1(やや重)で、力強く後続を0秒4差にねじ伏せた。
1000m通過・57秒9というHペースの中団。スタート後の1Fと終いの1Fを除けば、すべて12秒以下という、よどみのない厳しい流れを我慢強く先行勝ち、終わってみれば1分33秒8の好タイムが生まれ、記念すべき初のリステッドレースをもぎとった。
日本でのドバウィは、サンプル数が少ないが、ふわっとした感じのゴール前をみると、本馬もファルコンSなど、7Fあたりがベースかな?【評価A/適性・芝1400m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)
2019年1月7日(月)
『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 19年一発目に取り上げるのは、シンザン記念を快勝したヴァルディゼール。そのキレ味から、激戦区となる“黄金のバンタム級”でも王者候補筆頭に!? 今年のクラシック世代もロードカナロア産駒から目が離せない!(※評価はS〜Eの6段階)
■ヴァルディゼール(牡3・ロードカナロア×ファーゴ)
6日(日):京都11R・シンザン記念(GIII)/芝1600m/1分35秒7
11月の京都・芝1600mで新馬勝ち。やや重条件下で、上り12秒3-11秒6-11秒2というレースラップを、正味1F直線だけ、推定11秒0の高速ラップで突き抜けた。
さて、二戦目のシンザン記念。発表は良馬場だが、1回京都の芝は曇天の空模様同様、マイル換算で1秒近く時計がかかるパワー馬場。テンの2F目に10秒8のHラップが飛び出し、1000m通過は初日の京都金杯より0秒1遅いだけの59秒8。上り3Fのレースラップは12秒1-12秒1-11秒7(35秒9)と、忍耐と切れの両方を問われる難しい流れとなったが、2着馬が勢いよく外から迫っても、自らハミを取り直し、キッと鼻づらを伸ばした。なるほど、ラスト1Fは11秒7、最後のラップに闘志や勝負強さが刻印されている。
1分35秒7という走破タイムは、前日の京都金杯と0秒8差。上りラップに11秒台もあり、見た目ほど悪くない。
まだ若さは残っているが、レースに行けば集中してファイト。母ファーゴ(父ハーツクライ)は、新潟・芝マイルで3勝。体型はコンパクトなマイラー。ボクシングでいえば、参加人口がもっとも多く、ピラミッドは一番に高い「黄金のバンタム級」―― そのチャンピオン・ベルトのひとつは巻けるかも。クラシックディスタンスには、少し限界が出てくるかもしれないが、アーリントンCやNZTなど、NHKマイルを逆算して、いかにローテを組むかでしょうね。
2着のマイネルフラップは、12月24日付の当コラムで、「重はオニ」ふうに書いた馬ですが、しぶい馬場なら、いつでもこのくらい走る(キョウヘイみたいな馬ですね)。
ミッキーブリランテは、一瞬外から差し切りを思わせたが、3〜4角で頭を上げたり、直線大外に入ったロスがもったいなかった。【評価B/適性・芝1600m】
■ヒシゲッコウ(牡3・ルーラーシップ×ラルケット)
5日(土):中山5R・3歳新馬/芝2000m/2分2秒4
半兄はステルヴィオ(父ロードカナロア)、昨秋のマイルCSイン強襲は記憶に新しい。
父がルーラーシップに代わり、フレームが一回り大きくなった。パドックではチャカつき気味。この血統は、少しうるさいな。ただ、生産はノーザン。何頭かの兄姉を育てあげ、仕上げのサジ加減は手の内に入っており、ノーザンの育成力は、代を重ねるごとに、静かに着実に実を結ぶ。
なんて、1000m通過は1分2秒5のスロー。少しリキみ加減ではあったが、6Fめから12秒0-12秒0にピッチが上がり、上り3F・11秒9-11秒9-12秒1(35秒9)というタフなレースラップを、35秒1で一蹴。最後の1Fは、自然な形で11秒2前後のHラップをマークした。
心身ともに、まだ幼い。ローテーションや番組チョイスに気を配る必要があるが、兄とは違う中距離で、古馬になればオープン昇級が見える。【評価B/適性・芝1800m】
■エングレーバー(牡3・オルフェーヴル×マルティンスターク)
5日(土):中山6R・3歳500万下/芝2000m/2分2秒4
マルティンスタークの産駒たちは、脚も首も背中も長く、薄くて硬い仔が多かった。現3歳父はオルフェーヴル。少しうるさいのはご愛敬として、背丈は短め、身体もコロンと丸い。中内田厩舎だから、そう見えるのか――独特の張りと艶があるね。
1000m通過は、前段の新馬戦・5Rと、コンマ1秒遅れの1分2秒6。6〜7Fは12秒4-12秒2で展開、一転上り3Fは11秒9-11秒4-11秒9(35秒2)。馬群を割って抜け出した本馬の上りは34秒8だった。
全体時計・2分2秒4は、5Rの新馬と同じ。5Rのほうが流れが厳しいのは確かだが、上りラップの密度や精度の高さ、レースの質は6Rが上かなと思う。
2着のエスポワールは、道中馬をなだめることができず。うーん、もったいない。人気のラストヌードルは、直線入り口で体当たりだぁ〜!
なんて、「走る」オルフェーヴル産駒は、どんなシルエットが正しいのか。まだ正解と統一規格がない。ただ、現4歳のエポカドーロ、そして本馬は、とりあえずのお手本となるのだろう。
時はまだ1月、平場戦ではあるが、中山2000mの1勝は、遠く皐月賞の予行演習にもなる。目からウロコ、クラシック第一弾が終わったころ、そうか瓢箪から駒というレースだったのかと、思うかもしれない。【評価A/適性・芝1600m】
■シュリ(牡3・ハーツクライ×エーゲリア)
5日(土):京都5R・3歳新馬/芝1800m/1分52秒6
暮れの12月26日、川田が跨り、栗東坂路で53秒4-38秒3-11秒9を計測。これは動く、年明けの新馬勝ちは堅いだろうと、前評判の高かった馬。
長兄ジャンナ(父タニノギムレット)は5勝、2012年度産駒のグレイトチャーター(父サクラバクシンオー)も5勝。ハーツクライ産駒の本馬は、しなやかな490kgの黒鹿毛。1000m通過・1分3秒2の超スロー、ラスト3Fは12秒6-11秒6-11秒4、正味2Fの瞬発力決着を上手にしのいだ。
ただ、兄たちは短距離馬。距離は延びたほうがいいのか、それともマイラーか。身体もガラス細工のように繊細。時計短縮も含め、うーん。次走が悩ましい。【評価C/適性・芝1800m】
■ロジャーバローズ(牡3・ディープインパクト×リトルブック)
5日(土):京都8R・福寿草特別/芝2000m/2分2秒4
前走の紫菊賞は、タフなミドルペースの上に立ち、走破タイムは2分1秒0。2歳10月に、この記録はかなり上質。先着を許したアドマイヤジャスタは、つい先日のホープフルSを、正攻法の競馬で2着に頑張った。
福寿草特別は、その時計の精度を証明する形の勝ち星。前半5Fは1分1秒8の緩ペースを好位で構え、残り4F標識から12秒0-11秒7-12秒1-12秒1(3Fは35秒9)と、一気にレースが動き始めた瞬間を逃すことなく、2着に2馬身差で余裕のフィニッシュ。
ちなみに、母の半姉はドナブリーニ(その娘はジェンティルドンナ)。昨夏のセレクトで見ましたが、明け1歳の全妹も、シルエットのきれいな、なかなかの馬です。
なんて、今日は、この京都の福寿草特別も含め、中山も芝2000mの競馬が3つ組まれていたが、勝ち時計はみんな2分2秒4(笑)。
ただ、京都初日のメイン・京都金杯のタイムは1分34秒9。例年より、中山より1秒時計がかかるタフな馬場だった。【評価B/適性・芝2000m】
■グロオルロージュ(牡3・ジャスタウェイ×アウトオブタイム)
6日(日):中山5R・3歳未勝利/芝2000m/2分2秒3
ジャスタウェイ産駒は、素早さと切れならアウィルアウェイ。パワーならアドマイヤジャスタ、大別するなら、今のところは二つだろうか。
ジャスタ産駒はセレクトの当歳セリなどから、ファーストクロップを何頭も眺めてきたが、サイズも体型も、スタンダードはこの馬だろうなと、キャロットクラブのツアーに行ったときに感じた馬だった。
デビュー戦はスロー、インに押し込まれ3着に敗れたが、今日は1000m通過・1分0秒8のミドルを、踏み遅れないよう、勝負どころで急かせ気味に気合をつけ、12秒2-11秒9-12秒2(3Fは36秒3)というタフな流れを35秒7で、もうひと伸び。土曜の二鞍より0秒1速い、2分2秒3で決着。
何かしら地味に映る馬ですが、そのぶん馬券になりそうな馬ですね。【評価B/適性・芝2000m】
■(外)ヴァッシュモン(牡3・Dubawi×Daksha)
6日(日):中山10R・ジュニアC/芝1600m/1分33秒8
新馬は中山・芝1200mからスタート、中団から追い上げたが初陣は2着。脚色のよさを考慮し、二戦目は1F延長、東京の1400mを1分22秒1(やや重)で、力強く後続を0秒4差にねじ伏せた。
1000m通過・57秒9というHペースの中団。スタート後の1Fと終いの1Fを除けば、すべて12秒以下という、よどみのない厳しい流れを我慢強く先行勝ち、終わってみれば1分33秒8の好タイムが生まれ、記念すべき初のリステッドレースをもぎとった。
日本でのドバウィは、サンプル数が少ないが、ふわっとした感じのゴール前をみると、本馬もファルコンSなど、7Fあたりがベースかな?【評価A/適性・芝1400m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)