ヴェロックス再浮上! ジャスタウェイ産駒の初GIはまさかのダービー!?/丹下日出夫
『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 今回は新馬戦で圧倒的パフォーマンスを見せながら、近2走で惜敗を繰り返したジャスタウェイ産駒のヴェロックスをフィーチャー。今年からリステッド競走となった若駒S(OP)で、単勝1倍台に支持されたサトノウィザードに完勝し、クラシック戦線に再浮上した同馬。丹下も「ダービーへの布石はこれで打てた」とその実力を再認識。ジャスタウェイ産駒の初GIはまさかのダービーか!?(※評価はS〜Eの6段階)
■ヴェロックス(牡3・ジャスタウェイ×セルキス)
19日(土):京都10R・若駒S(L)/芝2000m/2分0秒7
野路菊Sは切れ負け、東京スポーツ杯は、勝負どころで押圧されるロス。若干筋張り、首差しも腰回りも薄く、まだ思うように動けない、動かせない。鍛えつつ甘やかさず、どういう身体を造るかが、この中間のポイントだった。
若駒Sの体重は、+8kg、490kg。おお、理想通りじゃないか。もう10kgくらい大きくなってもいいよ。前回よりはテンションの高さもマシ、薄く見せても返し馬は豪快。今日は決める。踏ん張りが効くとみて、1000m通過・1分1秒6というスローにも、直線入り口ではもう先頭。上り3Fの推定ラップは11秒5-11秒4-11秒6(34秒5)。過去の若駒Sのタイムと比較すると、大したことないように見えるかもしれないが、年明けの京都はパワー馬場。2分0秒7と上り34秒2という記録は、実は宝物。ダービーへの布石はこれで打てた。
サトノウィザードは、ヴェロックス一頭に相手を絞ったが、今日のところは経験の差。フットワークは軽い、飛ぶようだ。キャリアを積めば、もっと軽い馬場なら、また違った風景を演出できるように思う。【評価A/適性・芝2400m】
■アトラクティヴ(牝3・スクリーンヒーロー×シンハディーパ)
19日(土):中山5R・3歳未勝利/芝1600m/1分35秒4
母シンハディーパは1勝、母の妹はリラヴァティ(マーメイドS)、そしてシンハライト(オークス)。祖母シンハリーズ(生まれは2002年)から広がるこの血統は、人気もあり幹や枝葉が広がるのも速い。あっという間に牝系は3代目に突入した。
シンハリーズ一族、その仔たちの肌の薄さは特筆モノ。繊細な部分も遺伝するが、ぼーっと生きているより、少しくらい敏感なほうがいい。
考え方は人それぞれだろうが、せっかちなワタクシは、能力があると思えば、まったく勝負にならないような、変な叩き台を作るより、経験馬相手を承知で、真っ向勝負が好き。
なんて、1000m通過・58秒6という、タフな流れのアシストも得たが、正攻法の競馬で1分35秒4。写真判定にはなったが、着差以上に余力があった。
馬体はやや寸詰まり、テンションは高め。イレ込みがキツくなったりして次走崩れても、現地もしくは滞在競馬で立て直しが効く。ダートもOKかも。【評価C/適性・芝&ダート1400〜1600m】
■ヒシイグアス(牡3・ハーツクライ×ラリズ)
19日(土):中山9R・若竹賞(500万下)/芝1800m/1分50秒4
「AはBに勝ったが、Cには負けた」―― 対戦比較で順番付けするふうが流行っている。うーん。小学校3年生くらいまでは、そういう、喧嘩番付けみたいなものが通用した。
でも、次にCが出てきて、DやEやFとは未対戦。勝った、負けたを言っていると、そのうち収集がつかなくなるとも思うが、とりあえず新馬戦は、後に京成杯を快勝したラストドラフトに、上り33秒2で時計差なしの2着とあれば、前回の未勝利は順当勝ち。
「距離は1800mくらいがいい」というルメールのアドバイスもあり、1800mの若竹賞へ。1000m通過・1分3秒3の緩ペースを単騎逃げ。どうぞ逃げ切ってくださいという展開に持ち込んだが、心身ともに一歩一歩前進。春はまず、スプリングS(GII)あたりが似合いますね。
キャリア二戦目で頑張った、2着のフォークテイル、3着のグラディーヴァの牝馬二頭も、同じくらいほめてあげよう。【評価B/適性・芝1800m】
■コントラチェック(牝3・ディープインパクト×リッチダンサー)
20日(日):中山9R・菜の花賞(500万下)/芝1600m/1分33秒8
先週のGIII・フェアリーSを除外。一週延びたことで、カッカしやすいお嬢様のご機嫌はどうか。肌艶も敏感だがココロもデリケート、パドックを見るまでドキドキもの。
だが、マイナス分は2kg、時折り耳を動かしていたが、前回のサフラン賞よりしっかりと歩けている。
好発を決め、テンの2Fめは10秒9。今日は変に抑えつけず、馬任せのリズムで行く―― ルメールや陣営の決意のようなものが、1000m通過・58秒3というHラップに込められていた。
しかし、数字的には暴走に近い。普通なら坂下あたりでアゴも上り脚色は鈍るハズが、上り3Fのラップは11秒9-11秒5-12秒1。フィニッシュテープを切った時には、まだ余力あり、そして走破タイムは1分33秒8。桜がチラつく、並外れたスピード値を叩き出した。
ただし今回は500万条件。桜花賞に参戦するためには、もう1勝もしくは重賞で2着に連対して賞金を積み上げなくてはならない。はたして関西への輸送はどうか。煌めく才能のほどはわかったが、次走チョイスが難解だなぁ。
2着はタンタラス(母ブエナビスタ)。1分34秒3で走ったのに…。【評価A/適性・芝1600m】
■アンドラステ(牝3・オルフェーヴル×ヴァリディオル)
20日(日):京都6R・3歳新馬/芝1600m/1分36秒9
母系はドイツ系、本馬は3番仔。血統は手探りだが、デビュー前の調教で、主戦・中井Jが幾度も跨り、CWで密度の濃い併せ馬を消化してきた。
厩舎はどこ? 中内田厩舎? ――ほう、身体の膨らみや造り方など、中内田厩舎と聞けば、なるほどなと思ったりする。
日曜日は曇天、馬場は稍重。年明けの京都開催はパワー馬場で始まったが、本日はさらに、マイルで1秒、時計を要する。
前半1000m通過は1分1秒3、ハナを切れば馬場を気にすることなく伸びやかに走れる。楽なマイペースに持ち込めたのも勝因だろうが、上り3Fは12秒1-11秒9-11秒6と漸次加速。ゴール板を通過するとき、ぶわっと身体を大きく見せる馬は強くなる。距離延長も大丈夫。【評価B/適性・芝1600〜1800m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)
2019年1月21日(月)
『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 今回は新馬戦で圧倒的パフォーマンスを見せながら、近2走で惜敗を繰り返したジャスタウェイ産駒のヴェロックスをフィーチャー。今年からリステッド競走となった若駒S(OP)で、単勝1倍台に支持されたサトノウィザードに完勝し、クラシック戦線に再浮上した同馬。丹下も「ダービーへの布石はこれで打てた」とその実力を再認識。ジャスタウェイ産駒の初GIはまさかのダービーか!?(※評価はS〜Eの6段階)
■ヴェロックス(牡3・ジャスタウェイ×セルキス)
19日(土):京都10R・若駒S(L)/芝2000m/2分0秒7
野路菊Sは切れ負け、東京スポーツ杯は、勝負どころで押圧されるロス。若干筋張り、首差しも腰回りも薄く、まだ思うように動けない、動かせない。鍛えつつ甘やかさず、どういう身体を造るかが、この中間のポイントだった。
若駒Sの体重は、+8kg、490kg。おお、理想通りじゃないか。もう10kgくらい大きくなってもいいよ。前回よりはテンションの高さもマシ、薄く見せても返し馬は豪快。今日は決める。踏ん張りが効くとみて、1000m通過・1分1秒6というスローにも、直線入り口ではもう先頭。上り3Fの推定ラップは11秒5-11秒4-11秒6(34秒5)。過去の若駒Sのタイムと比較すると、大したことないように見えるかもしれないが、年明けの京都はパワー馬場。2分0秒7と上り34秒2という記録は、実は宝物。ダービーへの布石はこれで打てた。
サトノウィザードは、ヴェロックス一頭に相手を絞ったが、今日のところは経験の差。フットワークは軽い、飛ぶようだ。キャリアを積めば、もっと軽い馬場なら、また違った風景を演出できるように思う。【評価A/適性・芝2400m】
■アトラクティヴ(牝3・スクリーンヒーロー×シンハディーパ)
19日(土):中山5R・3歳未勝利/芝1600m/1分35秒4
母シンハディーパは1勝、母の妹はリラヴァティ(マーメイドS)、そしてシンハライト(オークス)。祖母シンハリーズ(生まれは2002年)から広がるこの血統は、人気もあり幹や枝葉が広がるのも速い。あっという間に牝系は3代目に突入した。
シンハリーズ一族、その仔たちの肌の薄さは特筆モノ。繊細な部分も遺伝するが、ぼーっと生きているより、少しくらい敏感なほうがいい。
考え方は人それぞれだろうが、せっかちなワタクシは、能力があると思えば、まったく勝負にならないような、変な叩き台を作るより、経験馬相手を承知で、真っ向勝負が好き。
なんて、1000m通過・58秒6という、タフな流れのアシストも得たが、正攻法の競馬で1分35秒4。写真判定にはなったが、着差以上に余力があった。
馬体はやや寸詰まり、テンションは高め。イレ込みがキツくなったりして次走崩れても、現地もしくは滞在競馬で立て直しが効く。ダートもOKかも。【評価C/適性・芝&ダート1400〜1600m】
■ヒシイグアス(牡3・ハーツクライ×ラリズ)
19日(土):中山9R・若竹賞(500万下)/芝1800m/1分50秒4
「AはBに勝ったが、Cには負けた」―― 対戦比較で順番付けするふうが流行っている。うーん。小学校3年生くらいまでは、そういう、喧嘩番付けみたいなものが通用した。
でも、次にCが出てきて、DやEやFとは未対戦。勝った、負けたを言っていると、そのうち収集がつかなくなるとも思うが、とりあえず新馬戦は、後に京成杯を快勝したラストドラフトに、上り33秒2で時計差なしの2着とあれば、前回の未勝利は順当勝ち。
「距離は1800mくらいがいい」というルメールのアドバイスもあり、1800mの若竹賞へ。1000m通過・1分3秒3の緩ペースを単騎逃げ。どうぞ逃げ切ってくださいという展開に持ち込んだが、心身ともに一歩一歩前進。春はまず、スプリングS(GII)あたりが似合いますね。
キャリア二戦目で頑張った、2着のフォークテイル、3着のグラディーヴァの牝馬二頭も、同じくらいほめてあげよう。【評価B/適性・芝1800m】
■コントラチェック(牝3・ディープインパクト×リッチダンサー)
20日(日):中山9R・菜の花賞(500万下)/芝1600m/1分33秒8
先週のGIII・フェアリーSを除外。一週延びたことで、カッカしやすいお嬢様のご機嫌はどうか。肌艶も敏感だがココロもデリケート、パドックを見るまでドキドキもの。
だが、マイナス分は2kg、時折り耳を動かしていたが、前回のサフラン賞よりしっかりと歩けている。
好発を決め、テンの2Fめは10秒9。今日は変に抑えつけず、馬任せのリズムで行く―― ルメールや陣営の決意のようなものが、1000m通過・58秒3というHラップに込められていた。
しかし、数字的には暴走に近い。普通なら坂下あたりでアゴも上り脚色は鈍るハズが、上り3Fのラップは11秒9-11秒5-12秒1。フィニッシュテープを切った時には、まだ余力あり、そして走破タイムは1分33秒8。桜がチラつく、並外れたスピード値を叩き出した。
ただし今回は500万条件。桜花賞に参戦するためには、もう1勝もしくは重賞で2着に連対して賞金を積み上げなくてはならない。はたして関西への輸送はどうか。煌めく才能のほどはわかったが、次走チョイスが難解だなぁ。
2着はタンタラス(母ブエナビスタ)。1分34秒3で走ったのに…。【評価A/適性・芝1600m】
■アンドラステ(牝3・オルフェーヴル×ヴァリディオル)
20日(日):京都6R・3歳新馬/芝1600m/1分36秒9
母系はドイツ系、本馬は3番仔。血統は手探りだが、デビュー前の調教で、主戦・中井Jが幾度も跨り、CWで密度の濃い併せ馬を消化してきた。
厩舎はどこ? 中内田厩舎? ――ほう、身体の膨らみや造り方など、中内田厩舎と聞けば、なるほどなと思ったりする。
日曜日は曇天、馬場は稍重。年明けの京都開催はパワー馬場で始まったが、本日はさらに、マイルで1秒、時計を要する。
前半1000m通過は1分1秒3、ハナを切れば馬場を気にすることなく伸びやかに走れる。楽なマイペースに持ち込めたのも勝因だろうが、上り3Fは12秒1-11秒9-11秒6と漸次加速。ゴール板を通過するとき、ぶわっと身体を大きく見せる馬は強くなる。距離延長も大丈夫。【評価B/適性・芝1600〜1800m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)