脳裏をよぎった“父ディープ越え” 資質ピカイチのアルジャンナ/丹下日出夫
【丹下日出夫のPOG手帖】『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 良血馬が続々とデビューを果たした中山・阪神開催週に、とりわけ目を惹いたのは池江泰寿厩舎のアルジャンナ。相当なポテンシャルを感じさせた直線の走りに、気は早いものの“ディープ越えの可能性も”と評した丹下氏。その他にも、中内田厩舎からリアアメリアに続く期待の牝馬も登場するなど、今週は計6レースを分析していきます!(※評価はS〜Eの6段階)
アルジャンナ(牡・ディープインパクト×コンドコマンド)
■8日(日):阪神5R・新馬/芝2000m/2分4秒4
母は北米5勝、G1・スピナウェイS、他GII・2勝。初陣の体重は460キロ。少し小さいかな?――いや、全身は緊張感の塊だ。後肢の返しの速さとメリハリ感がたまりません。
前半1000mは1分5秒2のスロー。腹をくくり、馬にまだまだを教え込みながら5頭立てのシンガリ。二度三度ハミを噛みそうになったが、4コーナー手前、外から先団にとりつき11秒5-11秒1-11秒4(3Fは34秒0)というレースラップに対し、自身の上がりは33秒6。直線半ば、並びかけた時点で追うのをやめてしまいましたが、促せば10秒台のラップを軽く2連発できていたか。
体型はまだ幼い。父ディープがそうだったように、体重そのものはこれからも大きくは増えないかもしれないが、もしかして父超え?――それを口に出すのはちょっと早いが、一冠目の皐月賞から逆算して、シンプルに王道を歩んでもらいたいもんです。【レース評価C/資質S/適性・芝2000m】
クラヴァシュドール(牝・ハーツクライ×パスオブドリームズ)
■7日(土):阪神5R・新馬/芝1600m/1分35秒4
同日4Rの新馬を勝ったフェアレストアイルと調教の併せ馬で脚色優勢。四肢や背中の長さは450キロと、ワンサイズ大きい。少しごつごつとした身体のライン、黒っぽい毛色は、母の父ジャイアンツコーズウェイが出ているのかもしれない。
道中1000mは1分1秒9の定番のスロー、ディープ産駒お得意の瞬発力決着となったが、11秒5-10秒8-11秒2(3F33秒5)を、33秒1で圧倒。操縦性も高く、距離延長に耐えうる体力を、ラップ構成でも示した。
2歳暮れの最終目標は阪神JF?――中内田厩舎にはリアアメリアなど大駒も控えているが、社台グループのディープ牝馬勢に、真っ向勝負のクラシックロードが待っている。【レース評価B/資質A/適性・芝1600m】
サクセッション(牡・キングカメハメハ×アディクティド)
■7日(土):中山9R・アスター賞(1勝クラス)/芝1600m/1分34秒6
6月・東京マイルの新馬戦を重馬場・1分36秒4、上がり34秒8で中団差し。そこからコーナー4つの中山マイルに舞台をかえ、今日は1000m通過・1分0秒7の緩ペースに我慢が効かない。前進意識の強すぎるこの時期の若駒は、ルメールはあまり無理して手綱を引っ張たりせず、ポンと5Fすぎあたりで動かす時が多い。
9月の高速馬場を考慮すれば、ロングスパートは正解。引っ掛かり気味に行ってもラスト3Fは11秒5-11秒1-11秒3と緩まず。決勝点では後続に1馬身半の完勝、1分34秒6も合格点。
ベストはマイルだが、距離を延ばすとフォームが伸びきる。古馬となり将来は、7Fのスペシャリストへと変身があるかもしれない。【レース評価C/資質B/適性・1400m】
ブレッシングレイン(牡・ディープインパクト×レインデート)
■7日(土):中山5R・新馬/芝2000m/2分2秒3
祖母は海外6勝(北米G1テストS優勝)、全姉ミュゼリトルガールは2勝、ひとつ上のカフジジュピターは現1勝。セレクト1歳セール出身、育成はノーザン。若駒時代から骨格や四肢のラインが大きく優美な馬だったが、486キロの馬体の張りはパツンパツン。
1000m1分3秒3のスローに、道中鞍上がひと押し、ふた押しするシーンもあったが、上がり3F・11秒7-11秒4-11秒0(34秒1)というレースラップを、坂上頂上で先頭馬に並びかけ、クビ差ではあるが余裕をもって2着を競り落とした。
9月の中山はふたを開けてみれば超高速馬場。しかし、中山の急坂を1F・11秒0を計測、自身の上がりは33秒6。思ったより首は使えていたかな? ただ、フォームなどまだ余分な部分などそぎ落とせる。走りのベースは10F。年末の最終目標はホープフルSあたりか?【レース評価C/資質B/適性・芝2200m】
ジュンライトボルト(牡・キングカメハメハ×スペシャルグルーヴ)
■7日(土):阪神3R・未勝利/芝1800m/1分47秒5
デビュー戦の中京芝2000mは、道悪を嫌がり高脚をつかい、追い込み届かずの3着に敗れたが、良馬場の阪神外回り・芝1800mに舞台を移し、今日は道中の走りも穏やか。前半5Fは1分1秒6のスロー、残り3Fから一気にペースが上がり、11秒5-10秒8-11秒4(3Fは33秒7)というレースラップを33秒4で競り勝った。
開幕週は、特に外回りコースはラスト2F目に10秒台が多く出現。今日の走破時計や上がりだけでは、まだ将来を判定し辛いが、牝系の大本はエアグルーヴ。10キロ、20キロと馬体を増やすたび、血統馬はなるほどこうして強くなっていくのかと思うかもしれない。【レース評価C/資質D/適性・芝2000m】
フェアレストアイル(牝・ディープインパクト×スターアイル)
■7日(土):阪神4R・新馬/芝1400m/1分21秒8
全兄ミッキーアイルはNHKマイルC、マイルCS制覇。兄姉たちも2〜3勝をあげており、良質なスピードが妹にも流れている。
ただ、サイズは436キロとコンパクト。トモは小さめ、そのぶん発馬で踏ん張りが効かない。3番手に追い上げ、抜け出した時は余裕があったように見えたが、時計の出にくい内回りとはいえ、上がりは11秒6-11秒3-11秒5。
1分21秒8という走破タイムも、未勝利戦でこれより速い時計やラップが出ていただけに、うーん。436キロから肉体面も含め成長を見守る期間が少し必要かもしれない。【レース評価D/素質D/適性・芝1200〜1400m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)
2019年9月10日(火)
【丹下日出夫のPOG手帖】『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 良血馬が続々とデビューを果たした中山・阪神開催週に、とりわけ目を惹いたのは池江泰寿厩舎のアルジャンナ。相当なポテンシャルを感じさせた直線の走りに、気は早いものの“ディープ越えの可能性も”と評した丹下氏。その他にも、中内田厩舎からリアアメリアに続く期待の牝馬も登場するなど、今週は計6レースを分析していきます!(※評価はS〜Eの6段階)
アルジャンナ(牡・ディープインパクト×コンドコマンド)
■8日(日):阪神5R・新馬/芝2000m/2分4秒4
母は北米5勝、G1・スピナウェイS、他GII・2勝。初陣の体重は460キロ。少し小さいかな?――いや、全身は緊張感の塊だ。後肢の返しの速さとメリハリ感がたまりません。
前半1000mは1分5秒2のスロー。腹をくくり、馬にまだまだを教え込みながら5頭立てのシンガリ。二度三度ハミを噛みそうになったが、4コーナー手前、外から先団にとりつき11秒5-11秒1-11秒4(3Fは34秒0)というレースラップに対し、自身の上がりは33秒6。直線半ば、並びかけた時点で追うのをやめてしまいましたが、促せば10秒台のラップを軽く2連発できていたか。
体型はまだ幼い。父ディープがそうだったように、体重そのものはこれからも大きくは増えないかもしれないが、もしかして父超え?――それを口に出すのはちょっと早いが、一冠目の皐月賞から逆算して、シンプルに王道を歩んでもらいたいもんです。【レース評価C/資質S/適性・芝2000m】
クラヴァシュドール(牝・ハーツクライ×パスオブドリームズ)
■7日(土):阪神5R・新馬/芝1600m/1分35秒4
同日4Rの新馬を勝ったフェアレストアイルと調教の併せ馬で脚色優勢。四肢や背中の長さは450キロと、ワンサイズ大きい。少しごつごつとした身体のライン、黒っぽい毛色は、母の父ジャイアンツコーズウェイが出ているのかもしれない。
道中1000mは1分1秒9の定番のスロー、ディープ産駒お得意の瞬発力決着となったが、11秒5-10秒8-11秒2(3F33秒5)を、33秒1で圧倒。操縦性も高く、距離延長に耐えうる体力を、ラップ構成でも示した。
2歳暮れの最終目標は阪神JF?――中内田厩舎にはリアアメリアなど大駒も控えているが、社台グループのディープ牝馬勢に、真っ向勝負のクラシックロードが待っている。【レース評価B/資質A/適性・芝1600m】
サクセッション(牡・キングカメハメハ×アディクティド)
■7日(土):中山9R・アスター賞(1勝クラス)/芝1600m/1分34秒6
6月・東京マイルの新馬戦を重馬場・1分36秒4、上がり34秒8で中団差し。そこからコーナー4つの中山マイルに舞台をかえ、今日は1000m通過・1分0秒7の緩ペースに我慢が効かない。前進意識の強すぎるこの時期の若駒は、ルメールはあまり無理して手綱を引っ張たりせず、ポンと5Fすぎあたりで動かす時が多い。
9月の高速馬場を考慮すれば、ロングスパートは正解。引っ掛かり気味に行ってもラスト3Fは11秒5-11秒1-11秒3と緩まず。決勝点では後続に1馬身半の完勝、1分34秒6も合格点。
ベストはマイルだが、距離を延ばすとフォームが伸びきる。古馬となり将来は、7Fのスペシャリストへと変身があるかもしれない。【レース評価C/資質B/適性・1400m】
ブレッシングレイン(牡・ディープインパクト×レインデート)
■7日(土):中山5R・新馬/芝2000m/2分2秒3
祖母は海外6勝(北米G1テストS優勝)、全姉ミュゼリトルガールは2勝、ひとつ上のカフジジュピターは現1勝。セレクト1歳セール出身、育成はノーザン。若駒時代から骨格や四肢のラインが大きく優美な馬だったが、486キロの馬体の張りはパツンパツン。
1000m1分3秒3のスローに、道中鞍上がひと押し、ふた押しするシーンもあったが、上がり3F・11秒7-11秒4-11秒0(34秒1)というレースラップを、坂上頂上で先頭馬に並びかけ、クビ差ではあるが余裕をもって2着を競り落とした。
9月の中山はふたを開けてみれば超高速馬場。しかし、中山の急坂を1F・11秒0を計測、自身の上がりは33秒6。思ったより首は使えていたかな? ただ、フォームなどまだ余分な部分などそぎ落とせる。走りのベースは10F。年末の最終目標はホープフルSあたりか?【レース評価C/資質B/適性・芝2200m】
ジュンライトボルト(牡・キングカメハメハ×スペシャルグルーヴ)
■7日(土):阪神3R・未勝利/芝1800m/1分47秒5
デビュー戦の中京芝2000mは、道悪を嫌がり高脚をつかい、追い込み届かずの3着に敗れたが、良馬場の阪神外回り・芝1800mに舞台を移し、今日は道中の走りも穏やか。前半5Fは1分1秒6のスロー、残り3Fから一気にペースが上がり、11秒5-10秒8-11秒4(3Fは33秒7)というレースラップを33秒4で競り勝った。
開幕週は、特に外回りコースはラスト2F目に10秒台が多く出現。今日の走破時計や上がりだけでは、まだ将来を判定し辛いが、牝系の大本はエアグルーヴ。10キロ、20キロと馬体を増やすたび、血統馬はなるほどこうして強くなっていくのかと思うかもしれない。【レース評価C/資質D/適性・芝2000m】
フェアレストアイル(牝・ディープインパクト×スターアイル)
■7日(土):阪神4R・新馬/芝1400m/1分21秒8
全兄ミッキーアイルはNHKマイルC、マイルCS制覇。兄姉たちも2〜3勝をあげており、良質なスピードが妹にも流れている。
ただ、サイズは436キロとコンパクト。トモは小さめ、そのぶん発馬で踏ん張りが効かない。3番手に追い上げ、抜け出した時は余裕があったように見えたが、時計の出にくい内回りとはいえ、上がりは11秒6-11秒3-11秒5。
1分21秒8という走破タイムも、未勝利戦でこれより速い時計やラップが出ていただけに、うーん。436キロから肉体面も含め成長を見守る期間が少し必要かもしれない。【レース評価D/素質D/適性・芝1200〜1400m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)